おばけと文章

5.

小暮写眞館(下) (講談社文庫)

下巻やっとやっと読み終わった…。

まぁ時間がかかった。

その理由は”幽霊”という存在。

わたしは心霊現象とか、生ならざるものの存在とかは基本的に信じています。でも、言葉にしてしまうとちょっと違うかなと思います。

信じていると、信じている人が集まってくるものです。

が、金縛りにあったとか、何かを見たとか、正夢を見たとか、信じれば救われるとか、そういった話を力説されればされるほど、白々しい気持ちになってしまいます。天邪鬼といえばそれまでかもしれません。

信じているからこそ、はっきりとさせないで欲しい存在であるわけで、そういった話は好きじゃないんです。

解釈は自由ですが。


この本の中でも、心霊現象が幾つか出てきます。

上巻では、生きている人の思いに焦点が当てられているのですんなり読めました。生きている人の意思や思いが強いのは違和感がないからです。


下巻の初めの方で、それまでふわふわしていた存在を、はっきりと現実のものとして認識させる書き方があり、少し残念でした。現実のお話っぽく書かれているからこそなおさらです。

まるっきりのファンタジーなら、幽霊の存在はまた別の話なんですけれど。

「失った家族の話」の流れに必要な存在ではあるのですが、第三者を用いて存在を明らかにするのはなんだかしっくりこない。


とはいえ、ここを過ぎるとまた勢い良く読み進められました。

痛みを抱えて逃げていた人たちが、痛みに向き合い、雪解けを迎えるラストは少しほろりときます。よかった。